「……ばーか」
微かに聞こえた声に、固まった。
ぎこちない動きで声がした方を見れば、そこには呆れた表情を浮かべた涼がいて。
「ひどっ」
短くそれに抗議したのは、零で。
ふぅ、とため息が聞こえた。
「自業自得だな。零も慰める必要なんかないぞ」
頬杖をついて、半眼で見てきたのは、誠だ。
「雅輝だってがんばったんだから、その言い様は……」
助け舟を出すようにかばうのは純で。
少しだけ困った表情をしていた。
「でもよ、純と零にあれだけ勉強教えてもらって、なぁ……?」
「そうそう。練習の合間にどれくらいやってたんだよ」
チクチクと棘が突き刺さる。
いままで無言だった、というか、言われ放題だった雅輝が口を開いた。
「だって科学なんてわかんないし! 古典だって必要ないじゃん! なんで学校って無駄な授業しかやらない……、いたっ!」
叫んでる途中で、ごつ、と良い音がその場に響いた。
雅輝の目の前には右手をグーの形にした誠が立っていて。
「言い訳するな。もっと真面目にやれば赤点なんて取らなかったんだろ? だから、自業自得なんだよ」
頭を押さえる雅輝に冷たく言い放ち。
そして、さらに、
「しかも、数学・英語・物理もダメだったんだよな? エスカレーター式の学校だからって油断してると留年するぞ」
冷たい目で。
やれやれ、と言った感じでまたため息を吐いた。
冷たいように見えるが、雅輝を心配しての行動だった。
誠は平均並みの成績は取れていたが、純や零のように他人に教えることができるほど勉強ができたということもない。
だから、多少冷たいかもしれないがこのような態度をとるしかなくなるのだ。
涼も同じようなもので、誠よりは短いとはいえ、2年来の付き合いになる。
その程度の心配は当たり前、と言ったところか。
純も付き合いは2年ほどだが、その間で雅輝の能力値はだいたい把握している。
だからこそ、毎回の定期テストの時には勉強を教えている。
最初、零は勉強を教えることはなかったが、純とのやり取りを見ていて、我慢ならなかったのだろう。
だが、2人がかり教えていても足りないようだ。
頭の回転は速いようなのだが、どうも記憶力がそれについていかないらしく……。
「……でも、追試とか課題でなんとかなるんだからいいじゃん」
開き直ったように。
そして、続けて口を開いた瞬間。
「純くんと零に手伝わせるなよ」
先を読んでの一言。
雅輝は口を開いたまま固まった。
(分かりやすい……)
内心ものすごく深いため息をついて。
その後、幾分落ち込んだ様子の雅輝を中心に、何も知らないお客さんを目の前にライブが始まった。
はい
雅輝くん馬鹿にされる図
日常茶飯事な感じで
純は真面目に心配して
涼は呆れたように馬鹿にして
誠は本気に馬鹿にして
零は馬鹿にしながら庇ったり心配したり…
雅輝は本当に頭の回転は速い設定なんですよ
ただそれに振り回されてうまく扱えないだけで
まぁ要領悪いの一言です