歩く。
 何も見えない、真っ暗な道を、歩く。
 歩き続ける。

 いつまで、歩くの?

 いつまでも。
 わかるまで。

 わかるって、なにを?

 わからなきゃいけないモノに、気づくまで。
 それが何かまだわからないから。
 気づくまで。

 気づけなかったら?

 もちろん、ずっと歩き続ける。
 気づけない、俺が悪いから。
 気づけるまで、ずっと歩き続ける。
 そんなことは、当たり前のこと。

 そんなこと、しなくてもいいよ。

 ……な、に?
 なんだよそれ。
 俺がどんなに歩いてたのか、わかってんのか?
 ずっと、歩いてたのに、いまさら。
 なんなんだよ……。

 “  ”はそんなことしなくてもいいんだ。
 すぐ、迎えに行くから。
 待ってて。
 ……ゴメン、ね。


 誰、だ。
 お前は。
 誰なんだよ!
 姿を見せろ!

 すぐ、わかるから。
 俺が誰なのか。
 気づくから。
 ……気づけるから。
 だから、待ってて。


 なんだよ、それ。
 わかんねぇよ……。
 わかるはず、ねぇよ。
 誰なんだよ、お前は……。



「涼兄ぃ? 大丈夫?」
 ……零、か。
 何でコイツの顔が真正面にあるんだ?
 しかも角度が90度回転してるし。
「頭、思いっきりぶつけたっぽいけど、へーき?」
 ってことは、俺は寝てるわけか。
 何でぶつけたんだっけ?
 ん〜……。
 あ。そうだ。
 リハ中に後に立てかけておいた板とか倒れてきたんだっけ……。
 よく生きてたな、俺。
 でも。なんか夢見てた気がするんだけどな……。
 どんな夢だったっけ。
「涼兄ぃ、休んでもいいんだよ? 歩き続けてたら、疲れるでしょ。純くんに愚痴こぼすわけにはいかないかもしれないし。俺みたいな年下にそういうこと言いたくないかもしれないけどさ。疲れたら、休んで。肩ぐらいなら貸せるからさ」
 早口だな、いつにも増して。
 コイツが照れてるときってわかりやすいからな〜。照れてるとき限定じゃないけど。
 ……あ。
 あの夢、思い出した。
 じゃあ、あの声は、コイツなのか?
 ってことは、俺は寝言でも言ってたのか?
 むぅ……。
「零」
 お、微妙に顔が赤くなってる。
 やっぱり照れてんだな。
「サンキュ、な」
 ちょうど手が届くところにコイツの頭があるから。
 軽くなでてやったらさらに顔を赤くしてさ。
 でもいつものように手を振り払う。
 甘えたいくせに、甘え下手で。
 不器用なくせに、世話焼きで。
 まぁ、それは俺たち全員に当てはまることだけど。
 コイツほど極端なヤツはいない、な。
 でも、それに救われることだって、いっぱいあった。
 コイツのおかげで、助かった。
 今だって、そう。
 あの言葉を言われなかったら、また俺は歩き続けてた。
 休むことは、しなかった。
 ……できなかった。
 だから。
 サンキュな、零。



あとがき…
  これは全然別な設定で書いていたものでしたが…
  どうもこの2人に置き換えても問題なさそうなので Freedom Wing のショートとしてあげてみました。
  補足としては、頑張りすぎてる涼を不器用ながらに支える零って感じです。
  しかし…、これを書いたのは、2004/01/17って…
  まぁ、高校生のときからお遊びっぽく書いてはいたのですが…
  こんな時期に何を考えていたんだ自分_| ̄|○